交通安全旗と交通安全標語

 黄色の旗といえば交通安全旗。その旗には「交通安全」の四文字だけではなく、交通安全標語を染め抜いた旗もあります。でも写真のように、風になびく旗の標語を読み取ることはなかなか困難。

 また、右端の走り去る子供のように、背の低い子が上を見上げて読むことも困難。

 札幌市西区役所裏にある琴似小学校では、校舎の周りを取り囲むフェンスの網に交通安全旗を結びつけていました(黄色の矢印)。これなら風がなくても、児童でも、読めます。そのすべてを紹介します。

◎ あんぜんは みんなのゆとりで つくるもの

◎ だいじょうぶ ちょっとのゆだんが じこまねく

◎ てんめつは とまれとまれの あいずだよ

◎ つぎの青 まてるこころが 事故ゼロに

◎ 横断歩道 アイコンタクトを 忘れずに

◎ 「渡っちゃえ」 そんな心に ブレーキを

◎ ちょっとまて!! 急ぐときほど平常心

◎ あなたにも つけよう正しい 信号機

◎ うんてん中 メール一文字 命取り

◎ 安全は 車も人も 自己(事故)責任

次の2旗は玄関前に掲げられていました。文字が読み取れるよう、風の頃合いを待って何回かシャッターを切ったうちの一枚です。

◎ はんしゃざい しらせるみつける 夜の道

◎ よくみてね 未来をせおった ランドセル

 余談ですが、この小学校に最近では珍しくなった二宮金次郎の像が建っていました。「歩きながらの読書はやめましょう」、というわけではないでしょうけれど。

 交通事故の多い現代、ながらスマホはやめましょう。

 交通安全標語に関する話です。

 一般財団法人全日本交通安全協会と毎日新聞社は毎年、交通安全スローガンを募集しています。

次は、令和3年にむけたスローガンで、内閣総理大臣賞(最優秀作)を受賞した作品です。

◆ 一般部門A 運転者(同乗者を含む)へ呼びかけるもの

◯ ゆとりある 心と車間の ディスタンス

焼山 美羽(やきやま みう)開智日本橋学園高等学校2年

……「ディスタンス」、今だから使える言葉ですね。

 

◆ 一般部門B 歩行者・自転車利用者へ呼びかけるもの

◯ ママなんで? 赤は止まると 習ったよ

天野 瑛斗(あまの えいと)関西学院大学4年

……自転車に乗っている親子の会話が聞こえるようですね。

 

◆ こども部門 中学生以下(自分たち自身)へ交通安全を呼びかけるもの

◯ 自転車に 乗るならきみも 運転手

前 奈菜子(まえ ななこ)埼玉県川口市立青木中央小学校4年

……自転車も道路交通法上は、「軽車両」でしたね。

次のサイトで、1966(昭和41)年からの全入賞作品を見ることができます。

https://www.mainichi.co.jp/event/aw/anzen/slogan/archive.html#header

 

なお、昭和41年の一般向け部門での内閣総理大臣賞は、「世界の願い 交通安全」

 「みぎがわは ぼくらのいくみち かえるみち」という標語がありました。私が小学生の頃、この標語板をあちらこちらで目にしたものです。当時は、舗装はもちろん歩道も整備されていない道路。多くの児童が交通事故の犠牲に……。

 

 「みぎがわ」は今でも生きているのでしょうか。今の道路交通法は、「歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。) と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄って通行しなければならないと記しています。

 

 都市部では今、歩道の整備された通学路が多くなりました。児童は「みぎがわ」を意識する必要が少なくなっているのかもしれません。しかし、千葉県八街市で起きた交通事故。新聞報道から推察する限りでは、死傷した5人の児童は道路の右側を歩いて下校中だったようです。歩道もガードレールもない狭い道路を……。

 

 「昔は、交通安全旗や交通安全標語というものがあったんだよ」と言える、「交通死傷ゼロ」の時代になりますように。