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「お地蔵さん」ではない、「地蔵」その2

札幌の狸小路五丁目に祀られている「狸地蔵」をお参りしてきました。正式な名称は「狸水かけ地蔵」。仏教でいうところの地蔵菩薩ではありませんが、たくさんのご利益がある石地蔵さんです。

狸小路では毎年、「さっぽろ夏まつり」と同時期に「狸まつり」が開催されます。今がその時。街には通称「ぽんぽこサンバ」が流れていました。この狸小路商店街テーマソングは、今年5月30日に88歳でなくなった小林亜星さんの作曲。正式な曲名は「狸小路はポンポコシャンゼリゼ」、作詞は伊藤アキラさん。

下記YouTubeで、聞くことできます。昭和前期~後期の画像つきです。

 

                          

月がポンと出りゃ星がポコ   花がポンと咲きゃ鳥がポコ

いつも世界はポンポコ祭り   ポンとポコとの二人連れ

ポンポコ札幌 ポンポコ札幌  狸小路はポンポコシャンゼリゼ

(https://www.youtube.com/watch?v=oKXe3lasBC0)

今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「みこし渡御」や「ナイトバーゲン」が中止。五丁目の装飾(写真左)は実施されていましたが、六丁目では渡御のみこしが宙吊り(写真中央)、そして八丁目にはこんな垂れ幕も(写真右)。

五丁目センタービル前です。黄色の矢印が本陣狸大明神社(通称「狸神社」)。最近はコロナ禍の影響で訪日外国人(インバウンド)がほとんど見られないため、街は閑散としていました。

通行人が入らない写真を撮るのは普段なら至難の業なのにーー。

正面から見た神社です。屋根に掲げられた「本陣狸大明神社」の文字が印象的。中央からやや右寄りの石像が「狸水かけ地蔵」。

狸水かけ地蔵の奥には提灯、右には手水鉢があります。狸地蔵さんはお酒を買い求めるためでしょうか、左手に「通い帳」をぶら下げていました。今はスマホをかざすだけで買い物ができる時代ですから、通い帳を知る人は少なくなったようです。通い帳とは、「掛買の時、品名。金高。月日などを記して、後日、金銭を授受する時の覚えとする帳簿」と、広辞苑が説明していました。

地蔵の左後ろに「狸地蔵八徳」が掲げられています。左の写真は現在、右は2010年5月に撮影したものです。八徳とは以下の通り。水をかけて地蔵の各部位に触れると、ご利益があるとされています。

1. 頭に手を触れれば知恵を授かり学業上達す

2. 目鼻をさすると他を抜き合格、当選、就職きまる

3. 肩から胸をさすれば恋愛成立、良縁をさずかる

4. 太鼓腹をなでると安産、育児疑いなし

5. 通帳にさわれば、信用を高め名声を得る

6. 杖をこすれば交通安全、災難を除き幸運を導く

7. 前へ金をたたけば商売繁盛、金運開く

8. 尻尾を押えると回春旺盛を増す

       南無本凡狸益(なむほんぼんりやく) 敬白

六番目に「杖をこすれば交通安全、災難を除き幸運を導く」とありました。車を運転する人はぜひお参りください。南無本凡狸益(なむほんぼんりやく)と唱えることを忘れずに。

地蔵の後方には「本陣狸大明神社縁起」が掲げられています。現在は提灯にかくれていて、よく読み取ることができません(下の写真は2010年5月のもの)。この縁起を読んでみると、この神社の御祭神は狸地蔵さんではありません。縁起の全文は長文につき省略しますが、本陣狸大明神社の御祭神は、本陣狸とかずさ御前という夫婦の狸さんでした。

化け狸の世界で有名な四国の「八百八狸 隠神刑部(はっぴゃくやたぬき・いぬかみぎょうぶ)」と「伊予の宮 瑠璃姫(いよのみや るりひめ)」の間に生まれた狸さんが、この本陣狸大明神。そして、その妻「かずさ御前」は千葉県の「しょうじょうじのたぬきばやし」で有名な證誠寺にゆかりのある狸さんなのです。この御祭神2体は、現在、外から見ることはできません。写真のように、狸地蔵さんの左奥にすえられた小祠に祀られているとのことです。

毎年1月2日には「初狸祭」を、8月の第1土曜日には「狸八徳例大祭」がそれぞれ本陣狸大明神社の前で行われるとのことです。北海道日本ハムファイターズもお参りしていますよ。