散歩中に見つけたフウロソウ属4種の話です。
今回はその1として在来種であるゲンノショウコ・イチゲフウロ、次回はその2として帰化種のヒメフウロ・ピレネーフウロを取り上げます。
写真はゲンノショウコです。西日本では淡紅色、日本海側で紅色の花が多く分布し、東日本では白色の花が多いとされています。わたしはこれまで白花しか見ていません。
咲き始めたころのゲンノショウコの花は、
紫色の雄蕊(おしべ)だけが成熟して花粉をだす「雌性」の時期で(写真左)、
やがて雌蕊が成熟すると「雌雄両性」になり(写真中央)、
花粉をだし終えた雄蕊がしぼむと5本の雌蕊だけの「雌性」の時期になります(写真右)。
成熟時期をずらして、自分の花粉で受粉しないようにしているのです。
これは遺伝的多様性を維持する役割と考えられています。
成熟が進むと、写真のような果実(さく果)をつくります。果実は長さ約2cm。花柱の基部に5個の膨らみがあり、その中に、たね(分果)が収まっています。
さらに成熟すると5裂した花柱の裂片(外側の皮・心皮)がはじけて、中に収まっているたねを飛ばします。
たねをはじき飛ばしたあとの果実の様子が、祭みこしの屋根の形に似ているところから、「ミコシグサ(神輿草)」とも呼ばれます。
ゲンノショウコは昔から胃腸の薬として知られてきました。
『牧野 新植物図鑑』は、「薬草で葉を乾かしてせんじると、はらくだりの薬としてゆうめいである.[日本名]「現の証拠」という意味で飲むとすぐ効果が現れる」と記しています。
手元にある「太田胃散 整腸薬」の説明書を見ると、「1日量(9錠)中にゲンノショウコとして1,020mgを含む」と記されていました。本当に身近な薬草なんですね。
日本のゲンノショウコの使用量は68t(平成26年度)。国内産(岐阜、長野)は1t程度で、多くは中国からの輸入です。中国での栽培種は、日本産の種子に由来するものが使われているとのことです。
最近、空き地でイチゲフウロを見つけました。
ゲンノショウコと異なるところは、「一華風露」の名の通り、花は普通1個ずつつき、径はやや小さくて10mmほど、茎に生える毛が下向きの伏毛であるなどの点です。
たねをはじき飛ばしたあとの果実の様子は、ゲンノショウコと同じ「みこし」でした。
これら2種のたねの話は、次回その2で。