JR函館本線の札幌駅と桑園駅との中間点あたりにまつられていた「桑園延命地蔵尊」(中央)と、「厄除地蔵尊」(右側)、「児宝地蔵尊」(左側)です。
この写真は平成22年5月に撮影したもの。いま拝することができるのは、桑園延命地蔵尊だけ。
桑園延命地蔵尊の台石銘板4行目。
「変死と事故死ヲ為シタル人三百六十四名ニ及ビ人之レヲ呼ンデ魔ノ踏切ト称スルニ至ル」と記されています。
このように鉄道が高架化される昭和63年まで、このあたりでは線路へ飛び込む人が絶えなかったとのことです。
そこで昭和2年、地元の人々は死者の供養と魔除けのために、お地蔵さんをつくることにしました。札幌生まれの阿部独海に依頼して、像高2.6m、重さ3.5tの日本一大きい桑園延命地蔵尊を建立しました。
このお地蔵さんの建立を機に事故は減少。
台石の銘板には、「迷信カ信仰カ 此ノ穿鑿(せんさく)ハ別トシテ 不思議ニモ殊ニ死ヲ遂グル人ナキニ至ッタ」と刻まれています。
建立の詳細はhttp://soenjizo.kasajizo.com/
長年、交通安全を見守ってきたこの尊像は、保護のために塗った耐水塗料が剥離して、たいへんお気の毒な状態でした(平成22年5月撮影)。
平成27年に改修工事が行われて桑園延命地蔵尊は再生、両側には新たに同型の「副地蔵尊」がまつられました。
今はもう拝することができない「児宝地蔵尊」(左側2枚)と、「厄除地蔵尊」(右側2枚)です。像高は80cmほどでした。(平成22年5月撮影)
魔の踏切跡地は、いまは緑あふれる歩道・緑地(札幌桑園停車場緑道線)に変わっています。
ここは歩行者専用道路。自転車は押して歩くよう指示されています。でも、時おり猛スピードで走り抜けていくひとがいます。
事故が起こらないよう、桑園延命地蔵尊の目はいまも「カッ」と見開いたまま……。
北海道新幹線の開業が予定されている令和12年度末、このあたりは札樽トンネルの出口になるそうです。
その変わり様に、お地蔵さんはアッと驚くかもしれません。